企業とスタートアップのマッチングが生むブレークスルー

ヴィンセント・フィリップ

Plug and Play Japan(株)代表取締役社長

2020年3月25日 11:34 Vol.71
   
ヴィンセント・フィリップ
Plug and Play Japan(株)代表取締役社長
Phillip Seiji Vincent
米国・サンフランシスコのシリコンバレー生まれ、日本育ち。サンディエゴ州立大学卒後、新卒で日系商社のシリコンバレーオフィスに勤務。2014年よりPlugandPlayにジョインし、IoT、Mobilityのプログラムのディレクターと日本企業の窓口を担当。 日本支社の設立と同時に17年より現職。現在はPlugandPlayJapanの代表として、パートナーとスタートアップがWin-Winの関係になるよう、イノベーションサービスを展開している。

世界中でスタートアップを支援するアクセラレーションプログラムを展開するPlug and Play。日本には2017年7月、まずは東京に進出。スタートアップと大企業を共に成長させるエコシステムの構築に取り組んでいる。そして同社が日本で2つ目の拠点に選んだのが京都だ。2019年7月にオフィスを開設し、12月からは実際にプログラムをスタートした。新たな展開の場として、なぜ京都を選んだのか。代表のヴィンセント・フィリップ氏に狙いを聞いた。

日本オフィスは世界33拠点中25番目だった

― Plug and Playはシリコンバレーを中心に世界中に拠点を置いています。事業内容はどのようなものですか。

ヴィンセント・フィリップ(以下VP)Plug and Playは2006年にシリコンバレーで設立されたイノベーションプラットフォームで、スタートアップのアクセラレーションプログラムを提供しています。その中で私たちのパートナーである大手企業とマッチングをしたり、ほかにコワーキングスペースの運営や、ベンチャーキャピタルとして自らスタートアップに投資をする事業も展開しています。

約10年前からシリコンバレー以外の都市でもプログラムを展開するようになりました。パートナーである大企業側から「うちの国でもやってほしい」というリクエストが多くて、まずはドイツのシュツットガルトでメルセデスとジョイントのプログラムを始めました。そのような形で年々拡大していき、いまはシンガポールや中国などアジアにも展開しています。現在は世界で33拠点あります。

― 2017年に東京に拠点をつくりましたが、経緯を教えてください。

VP 東京はグローバルで25番目の拠点でした。スタートは遅かったのですが、日本の大企業がスタートアップに関心がなかったわけではありません。シリコンバレーで行われているプログラムには全部で300社以上のパートナーがいますが、そのうち約70社は日本企業です。むしろ日本の大企業はシリコンバレーによく来ていました。

私は日本人のハーフで、日本育ちです。6年前にPlug and Playに入って、シリコンバレーでは「IoT」と「モビリティ」のアクセラレーションプログラムの責任者を務めていました。日本語を話せるのは私だけだったので、日本のパートナー企業との連携もすべて担当していました。その中で痛感したのは、日本企業がイノベーションを起こしたり、日本の大企業がスタートアップと連携することの難しさです。だからこそ自分が行って日本に拠点をつくりたいと考え、パートナー企業にアプローチ。すると三菱UFJ銀行が「フィリップが来るなら一緒にやろう」と最初に手を挙げてくれてオフィス開設に至りました。

― 日本の大企業から「日本でやってほしい」という声は少なかったのですか。

VP そうですね。シリコンバレーのプログラムに満足していた部分もあるし、そもそも日本でプログラムをやる発想もなかったと思います。「日本でやってほしい」と考えたとしても、最初に手を挙げるリスクを考慮して様子見をしていたのかもしれません。

 
 
 
 

テーマ別に大企業とスタートアップをマッチング

― Plug and PlayJapanの活動は、シリコンバレーと同じでしょうか。

VP ほぼ変わりません。テーマ別のアクセラレーションプログラムや、大企業とのパートナーシップを通してのマッチングは日本でもやっていて、さらにスタートアップへの投資事業も最近始めました。唯一本社と違うのは、東京は単独ではなく、東急不動産さんとのジョイントでやっています。

スタートこそ遅かったものの、オフィス規模は、東京が世界で4番目に大きいです。ちなみに2番目、3番目は北京と上海です。

― いま日本でもさまざまなアクセラレーターが活動しています。その中でPlug and Playの強みは何でしょうか。

VP 前提として、私たちはほかと競合するというより、オープンイノベーションに取り組む中で一つのファンクションであればいいと考えています。ですからパートナー企業がCVC(Corporate Venture Capital)をやったり、自社でアクセラレーションプログラムを行うのもいい。それと同時にPlug and Playもやるという感覚のほうが私たちもやりやすいです。

それを踏まえた上でPlug and Playのバリューをいうと、まず大手企業とのコンソーシアム型プログラムであることが特長です。例えば東京は「IoT」「フィンテック」「インシュアテック」「モビリティ」「ブランド&リテール」の5テーマ。それぞれのプログラムに、一対一ではなく、複数の大手企業に同じプラットフォームに入っていただきます。それによってスタートアップの引きつけや目利き、コラボレーション、エンゲージメントで、よりいいものが生まれやすい構造になっている。この形をシリコンバレー発でずっとやってきたのがPlug and Playであり、エンゲージメントの部分のノウハウは強みがあると思っています。

また、日本のアクセラレーターの中では、海外のスタートアップとのパイプラインが最も大きいと思います。逆にパートナー企業もグローバルで300社以上ですから、スタートアップに対しても、大手企業のコラボレーションを他よりマネージできると自負しています。

― プログラムに参加するスタートアップは日本のスタートアップが中心でしょうか?

VP 半分は日本のスタートアップで、もう半分は海外から呼び寄せて日本でサポートしています。シリコンバレーが本社なので海外のスタートアップはアメリカが多いですが、その他はちらばっていて、中国や東南アジア、ヨーロッパ、さらにイスラエルやアフリカのスタートアップも参加しています。海外スタートアップの目的は、日本市場への参入と、日本の大企業との連携です。日本のマーケットはまだ大きいですし、日本の大企業はスケールが大きく、グローバルでも質の高い活動をしていて、「連携できたらプラスになる」と魅力を感じている海外スタートアップは多いです。

― 大企業側は日本の大企業ですか。

VP 日本の大企業がメインですが、海外企業の日本オフィスにもパートナーになっていただいています。ですから、マッチングの組み合わせも「日本×日本」「日本×海外」などいろいろなパターンが考えられます。

ただ、現状でいうと、日本の大企業は、海外より日本のスタートアップに目を向ける傾向が強いですね。同じ事業を展開しているなら、物理的距離や言葉、文化などコミュニケーション面で日本のスタートアップのほうがやりやすいことは間違いないので。

海外のいいスタートアップも多いので、私たちとしてはバランスよく見ていただきたいと思っています。しかし、年に数回しか会えないという距離感では、確かに連携するのは難しい。ですから、海外スタートアップには、「もし日本のマーケットにコミットメントするのであれば日本人を雇うか、日本オフィスをつくってください」と伝えています。そこまでやらないと、日本の大企業は組みづらいのではないでしょうか。

 
 
 
 

なぜオープンイノベーションに失敗するのか

― 大企業がスタートアップと組んでイノベーションを目指す動きが広がっています。現状では、どのような課題があるでしょうか。

VP 課題はたくさんありますよ。日本に限らずシリコンバレーでも失敗するケースはあって、それらを見ると、だいたい3つの理由に大別できます。

まず1つ目は、そもそもオープンイノベーションの必要性を理解していないこと。大企業は、スタートアップのように新しいビジネスを自らつくることが難しく、そのままでは新しいマーケットをスタートアップに押さえられてしまうおそれがあります。だからこそ連携を考えたはずですが、その課題意識が薄いまま、なんとなくオープンイノベーションに乗り出してしまうのです。

課題が深く意識されていないと、いざ連携を始めても「この技術ってうちでも開発できるよね。どうしてスタートアップとやっているんだっけ」「このビジネスを始めると、あの部門と重複するから、やっぱりやめよう」とふらついてしまいます。これを防ぐには、「オープンイノベーションは大事だ」というざっくりした理解ではなく、自社がスタートアップと組む理由を最初に明確にしておく必要があるでしょう。

― 2つ目の理由は何でしょう。

VP 2つ目は、オープンイノベーションの必要性はわかっても、どのスタートアップと、どのように連携すればいいのかわからないということ。つまり目利きと方法の問題です。

目利きでいうと、やるからには必ず成功しなくてはいけないと考えている大企業が多いです。しかし、10社の中から完璧な1社を選ぶというやり方はうまくいきません。いろいろ試してみて、うまくいかなかったところは原因を分析して学び、次の挑戦に“Add Value”していく。ある程度のリスクを取りながら、そういうサイクルを回していかないと、新しいものは生まれてきにくいのです。ところが、日本の大企業はリスクを極端に嫌う傾向がある。そのマインドセットを変えていかないと、そもそもスタートアップと組むことが難しいと思います。

また、組んだとしても、スピード感や柔軟性で開きが大きすぎるとつまずきやすいですね。大企業とスタートアップは、本当に違う生き物。そう認識した上で、どのようにすり合わせていくのかがポイントになります。

例えば大企業は承認のレイヤーが何段階もあって、スタートアップから見るとどうしても決断が遅く見えます。そのスピードに合わせているとサバイバルできないので、結局、スタートアップが離れていくんですね。また、中にはスタートアップを見下して「向こうから提案するのが当然だ」と思っているところもある。そのあたりの意識は、海外企業と比べて日本企業は遅れている気がします。

私たちは最近、「Fast Fishになってほしい」とパートナー企業に伝えています。昔は大きい魚が小さい魚を食べる世界でしたが、これからは速い魚が遅い魚を食べる世界になる。実際、いまさまざまな業界で起きているディスラプションを見ても、大きいから勝った、守れたというケースはほとんどありません。だからこれからは大企業も、大きい魚より速い魚になることを目指さないといけない。そのような意識があれば、スタートアップとのギャップも埋めやすいのではないでしょうか。

―うまくいかない3番目の理由を教えてください。

VP 組織の中でコミットメントに温度差があると失敗しやすいですね。よくあるのは、イノベーション室が主導して始めたものの、事業部門がついてこなくて実証実験止まりになるケースです。実証実験はするものの、次のステップを組織として共有できていなくて、スケールしていかないのです。

大企業がオープンイノベーションを進めるときに求められるコミットメントのレベルは3つあります。経営層、イノベーション推進部門、そして事業部門です。このうちイノベーション室は日々、スタートアップと向き合っているので、コミットメントは強いです。

一方、経営層と現場はどうか。経営層は総じてオープンイノベーションの必要性に理解があります。ただ、「方法論が見えていないからバジェットを出せない」「決裁しにくい」という経営層も少なくありません。経営者のコミットメントが弱いと、実際にスタートアップとコラボレーションする事業部門のコミットメントも強まらないですよね。オープンイノベーションを進めるには、経営層がその方針を明確に示して、事業部門のKPI(Key Performance Indicator)の中にスタートアップとの協業を組み込んでいくことが欠かせないと思います。

実証実験の回し方や社内の巻き込み方については、Plug and Playが入ってサポートをすることもあります。ただ、パートナー企業の数が多く、1案件にがっつり入っていくことは難しい。そこでワークショップやイベントを数多く開催して、ベストプラクティスの共有に努めています。

 
 
 
 

連携成功の鍵は、組織に新しい風を吹き込むこと

― いま伺ったような壁を乗り越え、スタートアップとの連携を成功させている大企業もあるのでしょうか。

VP ありますよ。SOMPOホールディングスは、日本企業の中では進んでいる会社の一つだと思います。SOMPOは、シリコンバレーにいきなりSOMPO Digital Labをつくって人を置いたんです。担当者も出張ベースが多い他社と比べて、コミットメントは強いですよね。いまはイスラエルにもラボを開設して、実証実験を何度も回しています。

最近では、事業会社としてドン・キホーテやユニーを傘下に持つパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下PPIH)の取り組みが面白いですね。実はPPIHさんは、いままでオープンイノベーションの取り組みをほとんどやっていなかった。しかし社長が替わるなどして、会社としてコミットメントが強くなりました。具体的には、オープンイノベーションを「マシュマロ構想」と名づけて、推進役として子会社を設立。本体と切り離した出島をつくることで、思い切って進めようとしています。

Plug and Play Japanの最初のファンディングパートナー10社になっていただいたフジクラも、成功している1社に挙げられるでしょう。一般的にニッチな産業は独自技術による差別化にこだわりますが、フジクラはニッチでありながらオープンイノベーションの重要性をよく理解されていて、積極的に進めています。一緒にやって2年半になりますが、本業と直接関係のないスタートアップとコラボをしたり、自社で独自にコワーキングスペースも開設しています。

― うまくいっている企業には、どのような共通点がありますか。

VP 新しい風を入れているところが多いですよね。トップが替わったり、経営レイヤーでダイバースなチームができていると、オープンイノベーションに柔軟に対応しやすいと思います。日本の大企業の取締役会は、同じ世代、同じバックグラウンドの男性で占められることが多いので、そこは改善の余地があるのではないでしょうか。

もう一つ、最近のトレンドとして、CDO(Chief Digital Officer)を置く企業も現れ始めました。SOMPOはシリコンバレーにいた楢﨑浩一さんを招へいしてCDOにしたし、オリックスもオーストラリア人をDX(デジタルトランスフォーメーション)のトップにしました。単にデジタル部門の担当役員を置くだけでなく、そこにグローバルで活躍する人材を入れて新しい風を吹かせることが、オープンイノベーションの推進につながっている印象です。

 
 
 
 

日本のスタートアップは最初からグローバルを目指せ

― 日本のスタートアップ側の課題はいかがでしょうか。

VP 日本はテクノロジーに強い国です。それゆえに技術寄りになっていて、ビジネスマインドは海外のスタートアップと比べて足りない気がします。その技術を使ってどうやって儲けるのか、5年後にはどれくらいの規模のビジネスになるのか。そういうことを考えていなかったり、考えていてもプレゼンテーションできないのです。

別の言い方をすれば、CTO(Chief Technology Officer)は数多くいても、CEOをやれる人材がまだ少ないですね。シリコンバレーだとお金儲けしか考えていない人が一定数いるので、CTOとCEOがマッチングしやすい。成功しやすいのはそういうチームなので、私たちがプログラムでも、バランスの取れたスタートアップを採択するように意識しています。

海外と比べてもう一つ気になるのは、国内でスケールすることを目指す傾向が強いことです。海外だと、最初からグローバルの市場で勝負しようというスタートアップがほとんどです。シリコンバレーのプログラムには世界中のスタートアップが参加していますが、日本のスタートアップはまずいません。採択されたスタートアップは累計で約3,000社ですが、これまで日本は3、4社だけ。これは圧倒的に少ないです。

目線が国内に向く原因の一つは、ロールモデルがいないことでしょう。日本はスタートアップのエコシステムがまだ若く、いきなり世界に出て成功したスタートアップは誕生していません。そのせいか最初からグローバルでやる発想が浮かびづらいし、そう考えたとしても、スケールの仕方がわからないのだと思います。

   

― グローバル展開の支援は、アクセラレーターに期待されている役割の一つですね。

VP 私たちが一番やりたいのも、本当はそこです。なので、いいスタートアップがいれば、「グローバルにいってみようよ」「このビジネスならこの国に行ったほうがいいよ」とアドバイスをしています。Plug and Playの強みは、世界33拠点のネットワーク。紹介は簡単にできるので、どんどんブリッジをかけていきたいです。

― 実際に東京のプログラムをきっかけに海外に展開したスタートアップはありますか。

VP 3カ月のアクセラレーションプログラムの最後に、「EXPO」と呼ぶデモデーがあり、そのピッチで優勝したスタートアップには海外行きのチケットを渡しています。ほとんどがシリコンバレーに行きますが、その他の拠点でもいい。海外行きにはスタッフが1人同行。向こうではメンターやアドバイザー、パートナー企業に会ってもらったり、イベントでピッチをしてもらいます。

例えばGINKANとAMATERASにはシリコンバレーのピッチに参加してもらったし、スマートシューズをつくっているnonew folks tudioは、アディダスがパートナーを務めるパリのプログラムのスタッフに会ってもらいました。いまのところそこからすぐにグローバル展開を始めたケースはありませんが、刺激を受けたという声はよく聞いています。今後もそうした機会をつくって、ゆくゆくは海外のプログラムに採択されるスタートアップが増えてくればいいなと。

 
 
 
 

京都は連携しやすいサイズ感が魅力

― 2019年7月には、日本で2つ目になる拠点を京都に開設しました。なぜ京都だったのでしょうか。

VP もともと東京だけでなくほかにも数拠点あっていいと考えていました。いま中国は8拠点で、ドイツは4拠点。多拠点の国は珍しくないので、日本も経済規模を考えると、当然、複数拠点だろうなと。

候補はいろいろありました。その中でも特に京都に魅力を感じたのは、産官学連携ができていること。産業でいえば、京都には地元に本社を置いてグローバルでやっている大企業が多いですよね。実際、京都で始めたプログラムでは、京セラや島津製作所といった京都企業や、大阪ガスや大日本住友製薬といった大阪企業がパートナーとして名を連ねています。

官もスタートアップの育成には積極的です。今回は京都市や京都府、KRP(京都リサーチパーク)などがサポーターとして参画。連携してイベントをやったり、レギュレーションその他のところで協力していただけることになりました。そしてもちろん京都は大学や研究機関も強い。採択するスタートアップにも、大学発のものが入っています。

京都の魅力は、産官学がちょうどいい大きさでエコシステムを形成していることでしょう。東京は大きすぎて幾つものコミュニティがばらばらに存在していますが、京都は大きすぎず、“オール京都”で取り組めます。そのぶんパートナー企業のコミットも強く、プログラムのキックオフイベントは全パートナーで一緒にやりました。これからも、京都だからこそできる取り組みやコンテンツが出てくるのではないでしょうか。

― 12月から始まったアクセラレーションプログラムのテーマは、「ハードテック&ヘルス」。これも京都らしいですね。

VP 京都の強い産業といえば、インダストリアルと、ライフサイエンスやバイオ分野。それに合わせてプログラムを決めました。ただ、パートナーもスタートアップも京都企業に限っているわけではありません。テーマに当てはまるなら、関西以外やグローバルでもいい。地域よりテーマありきです。

― 今後の展開を教えてください。

VP 京都で2つ目のプログラムを検討中です。私たちのプログラムはパートナーにお金を出していただいて初めて運営できます。すでにパートナー側から「こういうテーマでプログラムはできないのか」という声は頂いています。

― 最後にお聞かせください。フィリップさんは、関西も含め日本のスタートアップを取り巻く環境を今後どのように変えていきたいですか。

VP 世界でトップ10に入るくらいの強いスタートアップエコシステムを、ぜひ日本で育てたいですね。このビッグピクチャーは、会社とも共有しています。

そのゴールを目指す上で変えていかないといけないのは、教育ではないでしょうか。残念ながら日本の教育は起業家フレンドリーではなく、ダイバースでもありません。私は小学3年生まで日本の教育を受け、それ以降はインターナショナルスクールと米国の大学でした。転校して最初に出された宿題は、「もし自分の世界をつくることができたら、どういう世界にしますか」。それまで正解がある宿題しか出されたことがない私は、何も書けなくて泣いてしまった記憶があります。

それに対して、アメリカ人の父は「自分の考えたことを書いていいんだよ」と教えてくれました。正解は一つではなく、自分で考えるものだという教育はとても大切。日本のように一つの正解を求める教育では、新しいものに挑戦するマインドが育まれにくいと思います。ここはぜひ変わってほしいところですね。