豊かな体験を生むVR 社会の実現へ

2022年9月26日 11:46 Vol.81
   
久保田 瞬
(株)Mogura CEO
Shun Kubota
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省入省。2015年にVRやAR、メタバースの専門メディア「Mogura VR」を立ち上げ、株式会社Moguraを創業。この分野が社会を変えていく無限の可能性に魅了され、それを広げる事業を展開している。XR/メタバースの動向分析、コンサルティングが専門。現在は子育てをしながら事業推進に、講演にと奮闘中。共著に『メタバース未来戦略 現実と仮想世界が融け合うビジネスの羅針盤』(日経BP 社/2022年)。

昨今「メタバース」という言葉をよく耳にするようになったが、実際にその価値を体感している人は、まだそう多くないのではないか。しかし一方で、デジタルに馴染みのない一般の人々の中にも、メタバース用デバイスを積極的に試し始めた人がいる。スマートフォンの登場以来といわれる“コミュニケーション革命”のただ中、メタバース社会の到来を見据えた現状分析とは?メタバースによる豊かな社会づくりを目指す企業の代表に話を伺った。
photograph: Takao Ohta
                                                        

 
 
 
 

人の絆は、バーチャルもリアルも同じ

―オンラインゲームにハマっていたという、久保田さんの学生時代の話を伺います。当時から友人関係を築くのにバーチャルでもリアルでも違和感がなかったとか。これはどういった感覚だったのでしょうか。

久保田 高校時代から大学時代までMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game:多人数同時参加型オンラインRPG)に夢中でした。高校時代は放課後ぐらいしか時間がなかったのですが、大学時代になると、学校に行っている以外は、ほぼオンラインゲームの中で過ごしていました。本当に朝から夜寝るまでやっていて、いわゆる「ネットゲーマー」のような生活でした。

そうなってくると、オンラインゲームでチームを作るなど、さまざまな人たちとの関係が生まれます。一緒にゲームのミッションをクリアするだけでなく、集まって雑談し、時にはオフ会も開催する。正直、顔も素性もわからない人たちなのですが、ゲームを通して一緒にいろいろな体験をし、絆が深まりました。それがリアルな場で出会って友達になる場合と、あまり違いがないように感じたのです。コミュニケーションを通して仲良くなっていく点では、自分にとってリアルもバーチャルも同じでした。

ゲームには、課題をクリアすれば派手に祝ってくれるなど、人の心を動かす仕掛けがたくさんちりばめられています。“ 大きな困難に、共同で立ち向かわせる”のも大切な要素。そもそもゲームは、長くプレーして課金させ続けるようになっており、そこでコミュニケーション力も培われます。みんなで一生懸命に野球を練習して甲子園に行くのと同じようなことが、仮想の空間上で行われているのです。

学生時代にゲームで友達になった中には、その後リアルな世界で一緒に仕事をしている人もいますが、全く違和感がないですね。自分にとって、コミュニケーションの場があることが重要であり、現実が全てではないということ。一緒に戦う仲間がいて目標達成に向かっていけた、というゲーム上のコミュニティがあったからこそ、朝から晩までずっとアクセスし続けられたのです。

それは決してデバイスやツールに助けられたものではない。当時、没頭していた世界は2Dでしたが、本当に自分がそこにいる感覚を味わうことができました。今みたいにボイスチャットという便利なものがなく、ただのチャットで、キーボードとマウスでカチャカチャやっているだけでしたが、本当にリアルで雑談しているのと同じ没入感でした。まるで部活の後に一息ついて喋っているような。

なので、最初にVRに出合ったときに、視聴覚的にそこにすんなりダイブできたので、「あ、これはすごくヤバいことが起きているな」と(笑)。これまではキャラクターが横に並んでいるのを見ていたわけですが、今は横を見たら“そこに人がいて話せる”という世界に行けるものが出てきてしまった。それが人間に与えるインパクトの大きさを想像し、とてつもない可能性を感じました。

―なるほど、コミュニケーションや経験は、リアルとバーチャルの壁を越える、ということですね。一時期流行していたオンライン飲み会が続かなかった理由も、一緒の経験ができなかったからでしょうか。

久保田 あれは個人的にはインターフェースの問題だと思います。ビデオ通話は結局、電話の延長線。基本的には1対1で、それを1対多にしたところで、つまりは1人が喋っているのをみんなで聞いている形になってしまう。全員正面を向いて発言者の話を聞く、そんな飲み会は実際にはないですよ(笑)。大勢が集まると、同時多発的にいろいろな場所でカジュアルな会話が発生し、仲良くなっていく。そういう場になっていない、ということですね。

1人が発言するのを全員で聞くという状況から抜け出すには、仕組みを変えるか、その場をうまく仕切れるファシリテーターのような人が必要です。ひと通り自己紹介して、砕けた雰囲気になったところで、「次はブレイクアウトルームでディープな会話をしてみて下さいね」とか、使う側が工夫する必要がある。たくさん会話が生まれた場合、声がかぶって誰かの話を遮ってしまうので、技術的なインターフェースは向いていないと思いますね。

しかしメタバースのプラットフォームは、空間オーディオという仕組みを採用しているものもあって、近くにいる人と遠くにいる人との声の大きさがリアル空間と同じように異なります。後ろにいる人の声はやっぱり後ろから聞こえてくる、という音の大きさと位置関係がきちんと反映されるのです。

もちろんまだ不完全な部分もありますが、ただ、普通のビデオ通話に比べると、そこはかなり配慮されている設計です。例えば、よくパーティーで、少人数で立ち話をしている場面がありますよね。あれはビデオ通話ではできないですし、メタバースもサービスによっては不可能なほど、難しい設計なんですよ。

 
 
 
 

社会課題と向き合った公務員時代

―大学時代にバーチャルの世界に没頭しながらも、卒業後は、環境省に入省されました。その意図は何だったのですか。

久保田 入省の動機は、メタバースとは全く関係ないです。大学時代にネットゲームをずっとやっていながらも、就活して仕事はしなければ、という認識は持っていたんですよね(笑)。世の中のために何かしたい、という気持ちが強く、より影響力が大きい国という単位で仕事ができれば、と国家公務員を目指しました。

環境省を選んだ理由は、2010年当時、環境関係の話題がホットイシューで、社会課題として認識され始めていたから。そこを切り口に取り組むのは自分の性に合っていると思い、環境省を第一志望にしました。

しかし入省1年目の3月に東日本大震災が発生。環境省は、放射性廃棄物や震災瓦礫の処理、放射性廃棄物の除染、そして原子力行政の3つの大きな課題に取り組むことになったのです。省としての仕事も予算も突然増えましたね。原発のゴミという最終的な後始末の問題を抱えながら、役所としてどう進めていくのか。本当に大きな変化を体験しました。

省庁は産業界をはじめ、さまざまな人たちと調整をしますが、環境省が向き合っているのはNPOや環境関連の会社の方々。当時としては、風力発電やSDGsなど「どうやってビジネスにしようか」という感じでした。しかし、そういった声を聞き、国に届けるのが役所の仕事。ソーシャル起業家のような方々と接しているうちに「公務員でなくても世の中を変えるような仕事はできるのでは」という気持ちが芽生え、退職しました。そして元々好きだったゲームの世界に携わることにしたのです。

XRやメタバースのメディアを始めた理由は、情報を届ける中立的な存在の重要性を感じていたからです。どこか一部に偏ると綻びが生じ、1カ所が行き詰まると全体が沈む危険性がある。僕には、業界を引っ張っていくメディアとしての役割を担うのであれば、中立であるべきという信念があります。このような考え方は、公務員時代の精神に多分に影響を受けていると思いますね。

また、メディアだけでなく、イベント事業も展開しています。これも中立の立場で、特定の企業に特別に肩入れするのではなく、等しくみんなで業界を盛り上げていきましょう、というスタンス。特定の色に染まらず、全体を見通して進めているつもりです。

さらに公務員だったという自分のバックグラウンドに信頼を頂いていることから、業界団体にいろいろとお声がけいただいたり、経済産業省ほか行政の取り組みに参画させていただいたり。自分が考えていたことがこんなふうにつながっていくんだ、ということを実感しています。

   
「つながり、共有し、高め合う」を目的に掲げ、株式会社Mogura が2019年より毎年開催するXRカンファレンス「XR Kaigi」。
   
さまざまな立場の人たちがコミュニケーションを交わせる場をリアルとバーチャルで企画し、業界全体の発展を目指している

―基本的には俯瞰したスタンス、ということでしょうか。

久保田 俯瞰はしていますが、「バーチャルはいいものであり、それで世の中を良くしていきたい」というポジションはとっています。このバーチャルという言葉の中には、VRやAR、Vチューバーやメタバースなどが含まれています。

 
 
 
 

VR普及をけん引するデバイスとは

―そういったバーチャルなものが、社会でどう実装されていくイメージをお持ちですか。

久保田 メタバースは3次元のインターネットという捉え方があります。そうなるとインターネットの社会実装とイメージが近いのかと思います。当初インターネットは、アクセスするのに1分いくら、で加算され、比較的お金に余裕のある人たちから普及しました。しかし、今では誰でも気軽に、歩きながらアクセスできる。メタバースもそういう進化を遂げるでしょう。

今後長い目で見れば、家からVRのヘッドセットで入る人もいれば、歩きながらARの眼鏡やスマートフォンでアクセスする人も出てくる。そういう空間的な世界が、身近なインフラになっていく可能性はあると思います。

特にヘッドセットは革新的なインターフェースです。それを被ると、自分がキャラクターと同じになる。それは以前、自分がゲームに何千時間も費やしてやっと得られた“同一化”という感覚です。現在のパソコンやスマホの画面でメタバースにアクセスしても、まだ多くの人たちが「何がすごいの? どう新しいの?」という感想しかないと思いますが。

―正直、私もまだそのような感覚しかないです。

久保田 そうですよね。空間を伴うメタバースを2Dの画面でやったところで、それはあくまで圧縮した体験にしかならない。昔は文字や絵や写真を見せて状況を伝える手段しかなく、その良さが伝わらないことも多かった。最近は動画になり、少し改善されましたが、でも動画も誰かが切り抜いて編集したもの。ところがVRはそのまま一緒にいる体験ができるわけです。VRで人を目の前にして「どういうコミュニケーションを取るのか」と皆が考えるようになり、初めて新しい世界として花開くのではないでしょうか。

公式データではありませんが、VRの滞在時間は、パソコンで普通にアクセスするよりも、ヘッドセットを着けた場合のほうが圧倒的に長いという結果があります。ヘッドセットのほうが体への負担が大きいのに、根本的に異なる体験を味わえるからでしょう。実際に体験できるようにならなければ、価値は絶対に伝わりません。そのためには、デバイスがものすごく重要な鍵になるのです。


―ヘッドセットが重要アイテムなのですね。

久保田 Meta(旧Facebook)が出している「Quest2」が鉄板です。パソコンなどは必要なく、単体動作なので、これを着けるとメタバースの中で手を動かす動作が自然にできる。メタバースのコミュニケーションも無料アプリで可能なので、お勧めです。3、4年前までは、高価で活用しづらいデバイスか、ゲーミングPCにつないでも、今ほどの体験はできませんでした。

VRヘッドセットが市販された2016年頃と比べるとどんどん改良されています。一番大きな変化は、これまでコードにつないでいたのが、単体動作になったこと。多分、もう5、6年先になると、もっと簡単に使える革新的デバイスが登場するだろう、との予測がある。その時に一気に広まるのではないでしょうか。

今のデバイスはまだ手を出しにくいと見られていますが、それでもQuest 2は世界で1,500万台は売れているそうです。スマホと比べるとまだ桁違いに少ないですが、これをゲーム機と考えるとかなり売れ始めていますね。VRのデバイスは、本当に順調に広がっています。

一方、ARのデバイスは、VRに比べると5年単位で遅れています。だから、まだ一般的に買えるARのデバイスはほとんどなく、本当にこれからという状況。手がけている会社は既に何社かあるので、数年後には状況は変わると思います。例えばお店に入ってARデバイスの眼鏡をかけると、アバターの店員が出てくる。その店員は、実は家からアバターとして接客している、ということも起こるかもしれませんね。

そうなると、メタバースは部屋に閉じこもってするのではなく、日常的にアクセスするものになる。そんな世界に変わっていく感じがします。この動きは日本でもじわじわ広がっていて、デジタルにそれほど詳しくない人でも「体を動かせるから」という理由で、デバイスを買う人が増えてきています。

   
VRヘッドセットの両手のコントローラーの操作は初心者でもわかりやすく、メタバースを始めるきっかけとして注目を集めている。
   
現在最も普及している VRヘッドセットといわれている、Meta社が提供する「Quest2」。

―デバイスを着け、仲のいい人たちと映画を一緒に観るような感覚も得られそうです。リアルな世界は、コンテンツをサイズが決まった空間で楽しみ、一方、際限のないメタバースでは、異文化の人たちと一緒に、それぞれ違う反応を楽しみながら盛り上がる。そんな新しいイベントスタイルも期待できますね。

久保田 そうですね。ただ、まだプラットフォームとしてそういう体験ができるまでには、残念ながら行っていません。「振り返っても誰もいなくて、自分しか見ていない」といった、見えているようで、目の前の解像度がすごく低くぼやけているなど、惜しい状態が続いているのがVRやメタバースの現状だと思います。これが今後、中長期的に解決されていくはずです。

 
 
 
 

メタバース空間でのビジネス

―それでは、メタバース空間でのビジネスはどうでしょうか。

久保田 ビジネスにおいては、まだトライ&エラーの段階ですかね。大成功した、というより、中長期的な経営課題に対して
「メタバースの仕組みを実験的に試している」という状況だと思います。

これはまさにインターネットが登場した頃と似ています。既存の小売店舗は、ECサイトが出てきたときに自分たちの店の客を奪う敵だとみなしました。しかし、現在はどうでしょうか。そのような店舗の多くが、自らECサイトを開設し、ブランディングも行っている。結局は新しいものが出てきたところに、自社のビジネスの延長としてどう適応できるか、ではないでしょうか。

メタバースの面白いところは、3次元性です。空間があり、自分の身体を使う。メタバースの店舗をつくるのは、リアルな店舗でお客さんに「どういう体験をしてもらうのか」を考えるのと、さほど変わらないと思います。なのでリアルな場に関わっている方々は、メタバースととても相性がいい。これは“ 自分たちが今までやってきたことを生かせる” 大きなチャンスです。

アパレルでメタバースに積極的な例として、ナイキがあります。バーチャルアイテムへの連携といった領域では、群を抜いている。最近ロブロックス(Roblox)という海外系のメタバースにナイキランドという世界が登場しました。そこではゲームで遊べる空間があったり、オリジナルのアバターグッズを販売するなど、最も大規模な事例ではないでしょうか。

ほかにも、ビームスのバーチャル上での接客や、日産のメタバース空間での新車発表やアバターの試乗イベントなど、面白い事例が出てきています。

   
2022年8月に開催された世界最大級のVR イベント「バーチャルマーケット2022 Summer」でのビームス店舗の様子。このイベントへのビームスの出店は今回で4回目。リアル店舗のスタッフがアバターとなって接客し、話題となった。画像提供:ビームス

―広告はどのようになっていくと思いますか。

久保田 メタバースの世界は3次元。どんどん現実に近づくにつれ、広告もいかに人々の視界に入っていくか、という課題が生じます。それはリアルの世界でいわれている最適化の課題と同じ。ネット上では、ある程度利用者の興味に沿った広告を出し、公共空間においては街の人に同じものを見せる。メタバース上でも今後同じ流れになると予想され、部分最適か全体最適のどちらを優先するのか、どっちつかずなところがありますね。

ただ、これまで培われてきた手法はメタバースでも継承されていくわけですが、次の次元に行くと、そういう話ではなくなってくる。ナイキの事例のように、会社の世界観やブランドがあり、そこに登場するアバターが、ある会社のものを身に着けているとか、そういったほうがより効果的ではないかと思います。リアルの世界で、みんなが流行のものを身につけていると欲しくなるのと同じですね。

 
 
 
 

メタバース空間と現実世界との差異と接点

―部分最適と全体最適の課題でいえば、フラットでオープンなメタバースがある一方、特定の嗜好の人々が集まる部分最適なメタバースも登場することで、分断化も想定されます。

久保田 メタバースはフラットな世界という前提ですが、実はそうでない側面もある。ボイスでの連絡が常になると、母国語の違いによってメタバースも分かれます。同じ言語圏のユーザー同士で固まってしまい、そこを超えられないと、フラットとは言い切れない。

実際に、Metaはその点を問題視していて、自動翻訳システムを作ろうとしています。今後、言語で分断されてしまうのは永遠の課題ではなくなるかもしれません。これからは、話している言葉では人が区別されず、地理的な距離も関係なく、コミュニケーションがとれる状態になっていく。すると、今までの国家とは異なる形でコミュニティが形成されることも考えられます。

また、ネットの登場で少しずつ増えているのが、1人が複数の人格を所有するという考え方です。コミュニティごとに自分のキャラクターや性格を変える。これはある意味、仕事とプライベートを分けるのと同じですね。それが、アバターの登場によってさらに加速していく。ボタン一つで見た目が変わるので、ビジュアルも含めて複数のアイデンティティを所有することはあり得ます。既にSNSでは、複数のアカウントを持つのが一般的になりつつあります。

そういうふうに複数の価値観やアイデンティティを持ってコミュニティにアクセスできるのは、個人にとっては非常に自由度の高い状態です。しかし、マクロで見た場合、危険思想の人たちが集まって何かを起こす、といったような社会問題に発展する危険性も考えられます。

―メタバースが基本的にはフラットな社会とはいえ、言語によって分断されてしまうのは納得です。そうすると日本の文化や社会は、メタバースで影響力のある存在になり得るのでしょうか。

久保田 そうですね、メタバース空間に集まる理由として最も多いのがゲームです。数億人のプレーヤーがいるゲームで、何か別の活動が始まったらそれはメタバース空間といえます。そういう意味で、ゲームは大きなインセンティブです。そして独自の世界観を持ったアニメや漫画は、多くの人々を惹き付けるIP(Intellectual Property:知的財産)となりますが、それらを多く生み出しているのが日本です。

これまでで最も成功しているIPビジネスの事例といえば、ディズニー。人々は映画やアニメのほか、現実空間に建設されたディズニーランドを訪れ、夢中になれる世界観に時間とお金を投じます。日本は同様の魅力的なコンテンツを数多く持っているため、大きなチャンスがあると思います。

また日本には、個人のクリエイターが活躍する土壌が育っています。商業活動ではない、コミックマーケットを中心とする2次創作など非常に盛んです。その点も興味深いですね。さらに作品の作り込みが丁寧で、グローバルで高く評価されている。
今後メタバースは、個人のクリエイターがより活躍する場になっていくはずなので、大いに期待できますね。

   
久保田氏と石村尚也氏の共著『メタバース未来戦略』(日経BP 社/2022年)。企業や個人に向けて、メタバースの解説とビジネスの始め方が簡潔にまとめられている。

―それは楽しみです。最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

久保田 僕が経営しているMoguraという会社では、「豊かな体験を世界中に」をミッションとして掲げていて、豊かなバーチャル体験を世界中に広めていくことが目標です。そのためにメディアやイベント、企業を手伝うコンサルティングを展開します。今までは助走に近く、これからがいよいよ本番のフェーズ。その中で、自分たちが業界をしっかりと下支えしていければと思っています。

あと、個人的にメタバース関連で気になっているのが“ 時差”。ネットの世界でも同じですが、世界中がつながって同じメタバース空間にいても、時差には勝てず、夜の時間帯に寝なくてはいけない人が出てくるわけです。時差の影響がないメタバースが実現できるといいな、と願っています。そのためのシステムをどうつくればいいかまだわかりませんが、こういった肉体がコントロールできない要素を、進化するか克服するかで解消できないものか。メタバースで食事をしてもお腹が満たされないように、現実とつながっている世界観をなくすのは、やはり難しいですね。