働く人と企業が安心できるサービスを
— ここ数年、スポットワークの注目度が急激に高まっています。先駆けとなったタイミーの、創業のきっかけは何だったのでしょうか。
石橋 タイミーは代表の小川嶺がアルバイトで働いた経験から生まれました。小川はまだ学生だった20歳のときにファッション関係のマッチングアプリを開発、起業しています。しかし本格展開の直前に事業中止を決断、起業でつくった借金を返済するため、コンビニや倉庫作業などの日雇いのアルバイトを始めました。
やってみてわかったのが、アルバイトは履歴書を用意し面接を受けるなど、働くまでにいくつもの手順がありますが、それをやってもいつから働けるのか、雇い先から連絡が来るまでわからないということ。おかげで予定も拘束されるし、働いてもすぐには給料がもらえない。勤務先によっては2カ月後ということもあります。
そういった不満から、小川は「思い立ったときにすぐに働けて、働いたらすぐお金をもらえる仕組みをアプリでつくれないか」と考え、自らプログラミングしてシステムを構築、タイミーを立ち上げたのです。
— 創業は2017年8月でしたね。石橋さんはどういう立場でタイミーと関わったのですか。
石橋 小川がタイミーの事業化を計画していた頃、僕は居酒屋の「塚田農場」などを経営する株式会社エー・ピーホールディングスで、人事を担当していました。小川とはタイミー創業以前から交友があったので、求人する側の立場からシステム設計の助言をしていたんです。
開発したのは、空いた時間が1時間でもあったら人手がほしい企業とその場ですぐに契約できる、時間単位の“スキマバイト”アプリです。
働く側はアプリ上で仕事の内容と時給がわかり、タップすれば申し込みが完了する。働く時間を自由に選べ、マップで仕事の場所がわかり、さらに働き手と雇い主がお互いを評価し合う相互評価機能を取り入れることで、仕事を申し込む前に仕事先の評判をクチコミで確認できる……そんなアプリを目指しました。
— アルバイトが会社を評価する機能に対して、企業側から反発はなかったのですか。
石橋 確かに、不安に思う声もありました。ですが、創業当時の時代背景として「休憩時間がない」「バイトにも厳しいノルマがある」などといった“ブラックバイト”が社会問題になっていたので、働く側が安心できるような仕組みを取り入れたいと考えたのです。
— 評判はいかがでしたか。
石橋 働く人の募集は、最初は小川と交流のあった人々に、実際に登録して試してもらうところから始めました。試した人たちからは好意的な反応が多く、クチコミでどんどん広がっていき、やがて1日に何万人も会員が増えるようになっていきました。
一方、企業からは「どんな人が来るかわからないのは心配。一度は面接したい」「評価クチコミを書かれることにはリスクがある」という懸念もありました。
— そういった課題はどう解決していったのですか。
石橋 説明して納得していただいたというより、実際に使っていただいた結果、理解してもらえたことが多かったですね。試しに登録されて、実際働きに来てもらったら、思っていた以上によかった。結果として、面接・履歴書なしでも、安心して利用できるサービスだと知られるようになり、導入する企業が増えていきました。また、実際に使われていく中で、相互評価機能にはいろいろな副次的効用があることがわかってきました。
— どんな影響がもたらされるのでしょうか。
石橋 ワーカーからの評価によって、企業の職場環境がオープンになるという効果があります。飲食チェーンなどでは、ワーカーからの評価が高い店もあれば低い店もあるという違いが表れ、企業がその原因をチェックすることを通して、各店の職場環境が改善されるという効果が出ています。
企業にとっても、働いてもらうワーカーがどんな評価を受けているかが事前にわかるのは大きな利点です。いろいろな場所で働いた際の評価が見られるので、採用担当の皆さんからは、「本人が自分で書く履歴書よりも、よっぽど信頼できる」と言われています。
ワーカーも、仕事ぶりを評価してもらうことによって、自分の適性を把握できるという面があります。試しに働いてみて、そこでの評価が高ければ、「自分はこの業界に向いているんだな」とわかるし、逆に評価が低ければ「向いていないな」と感じられるわけです。
タイミーでは相互評価機能をさらに進化させ、「バッジ機能」も実装しています。スポットワークで来た人の仕事ぶりが期待以上だったという評価が得られると、その人は「バッジ」(プロフィール上で確認できるマーク)をもらえ、自分の働きぶりが目に見える形で認められるわけです。バッジは同じ飲食業でも「ホール」「洗い場」「調理」「宴会スタッフ」というように職種が細かく分かれていて、その人の得意なことが一目でわか
るようになっています。それによって時給が上がったり、バッジのある人のみを募集したりというケースも出ています。
— 企業側からはタイミーのシステムに関して何か要望はありましたか。
石橋 当初は「短時間だけ来られても、お願いできる仕事はないよ」という反応が多くありました。これについては僕たち社員が、タイミー導入予定の企業へと実際に働きに行って、「業務の切り出し」を行うことで対応しました。
— タイミー社員自らアルバイトをするんですか。
石橋 実際に仕事をしてみて、「この業務であれば、いきなり来た人でも大丈夫」という業務と、「この業務については社員でないと難しい」という業務を切り分け、大丈夫そうな業務だけをスポットワークに出すよう手配するんです。スポットワーカー用のマニュアルを作成することもあります。このマニュアルは、タイミーのアプリ上でも読めるようにしていて、そこで働く予定の人には、事前に読んでもらうように伝えています。
マニュアル作成は、飲食業での業務切り分けから始めました。その後、介護に関するマニュアルもつくりましたし、農業に関しては作物ごとに、数十品目の事例集をつくりました。この切り出し作業は創業当時だけでなく今も続けていますが、現状、コンサル料などはいただいていません。
— スポットワーク普及のため、そこまでの手厚い努力をされているんですね。タイミーのシステムには、ほかにどういった特色がありますか。
石橋 これまで短時間のスポットワークが一般的にならなかった背景に、短時間といえども雇用契約を結ぶとなると、企業側に労務管理の必要が出てくる、ということがありました。採用面接以外にも、アルバイト一人ひとりについて労務管理の手続きをしなくてはなりません。そんな手間をかけて、働くのは数時間だけというのは、企業からすれば割に合わないのです。
そこでタイミーのマッチングシステムでは、会社とワーカーの間にタイミーが入り、企業の労務管理をサポートすることにしました。雇い主の労務管理負担をデジタル技術で軽減したんです。
人手が必要になったとき、企業はアプリで簡単に雇用できる。もし来てくれた人がよかったら、そのまま次の仕事を頼むことや、正社員になってもらうことも可能です。
— 働いてすぐお金をもらえるのは、どのような工夫があるのでしょうか。
石橋 そこにもタイミー独自の仕組みがあります。賃金計算は、QRコード等で読み取るなどして記録された勤務時間に基づいて、タイミーのシステム上で行われ、また、賃金の支払いは、ワーカーがタイミーにあらかじめ登録する銀行口座に、タイミーが求人事業者に代わって振り込む方法により行われます。
僕たちは、働く人のために「働いてすぐにお金をもらう」という仕組みを実現させたかったので、グレーゾーン解消制度(現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、事業者が安心して新事業活動を行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度)を活用し、厚生労働省から、条件付きで認めてもらうことができました。
働き手の視点に立ってサービス設計をしている事業者はかつてなかったのではないかと自負しています。
社会課題に取り組むスポットワーク研究所
— タイミーでは2021年に「ギグワーク研究所(現:スポットワーク研究所)」を設立しています。設立の目的はどこにあったのですか。
石橋 その頃、ギグワーク(雇用契約を結ばない短時間の働き方)について、世間で賛否両論の議論が起こっていました。自由で新しい働き方として注目される一方、成果報酬で収入が保障されない、事故の際の労災や、最低賃金や休憩時間、残業時の割増料金の適用がないといった問題点も。これは、ギグワークが個人事業主への業務委託契約として行われていることに起因しています。
タイミーではスポットワークを、「雇用契約のもとでの単発・短時間勤務」と定義しています。雇用契約が存在するため、時給制に基づく賃金の保障があり、事故が起きた場合は労災が適用され、最低賃金や休憩時間、残業時の割増料金もあります。
これはギグワークとの大きな違いで、利点でもあります。
しかし当時、スポットワークは十分に認知されておらず、ギグワークと同じものと見なされていました。そこでスポットワークを広く知っていただくため、研究所をつくって情報の発信を始めたのです。
— ホームページを拝見すると、現在の研究所の活動はかなり多岐にわたっていますね。
石橋 スポットワーク研究所には、大きく2つの役割があります。
1つは調査と情報発信です。スポットワークという新しい働き方を安心安全に活用いただくための取り組みや、スポットワークを通じた社会課題解決への貢献を発信しています。
また、タイミーのデータから、スポットワーク市場のクォータリーレポートも発信しています。こうした統計データは、内閣府など政府に伝えるだけでなく、研究所としても発信していきたいと考えています。
— 自治体との連携プロジェクトにも取り組んでいますね。
石橋 はい。調査と発信に加え、もう1つの研究所の役割は、省庁や自治体と連携し公共政策に関わっていくことです。
2023年3月、岐阜県下呂市と提携したのが最初でした。下呂市は温泉で有名な観光地なのですが、宿泊業や農業を中心に人手不足が深刻だったため、その解消を目指して連携を打診されたのです。下呂市では提携から1年でワーカー数が約2.5倍になるなど明確な成果が得られたことから、その後も他の自治体から提携の申し込みが相次ぎ、現時点(2025年4月)で18都道府県の34自治体と連携しています。
— 自治体はタイミーにどういった役割を期待しているのでしょうか。
石橋 自治体との連携でタイミーが果たすべき役割は、大きく3つです。
第1の役割は地域の潜在労働力を発掘し、人手不足を解消すること。
人手不足といわれますが、普通に募集しても人が集まらない地域でも、時間と業務を細分化することで働ける人がたくさん出てきます。タイミーでは10人の募集をかけると、平均で8.6人の申し込みの実績があります。
農業では収穫の時期など、短期間に大勢の人手が必要となることがあります。一方で、自然が相手なので、忙しい時期とそうでない時期があります。忙しくない時期に「スポットワークで働きませんか」と提案していくことで、新たな労働力を生み出せるわけです。
第2の役割は、雇用機会の創出と人口流出の防止です。
地域内のさまざまな産業からスポットワークの機会が提供されることで、年間を通じて新たな雇用機会が生まれます。それが人口流出を防ぐことにつながります。
地方では多くの若い人たちが「自分たちの地域には仕事がない」と思い込んで、都会に出てしまっています。でもよく調べれば、どの地域にもいろいろな企業があり、その多くが人手不足に悩んでいます。ただ若い人たちはアルバイトでもしない限り、そうした企業を見に行こうとしないんですね。
— 地方出身の自分が学生だった時代にタイミーがあれば、地域の企業をもっと知ることができたと思ってしまいます。
石橋 タイミーにはワーカーに魅力的な中小企業を紹介する役割もあります。学生など若い人たちが自分の住む地域の企業にスポットワークで働きに行くことが一般的になると、企業と若い人たちの間につながりが生まれます。都会に出る代わりに、知り合った会社に就職するということも出てくるでしょう。
第3の役割は、地域の魅力のアピールと域外からの人の呼び込みです。
地域外の人がタイミーを通じてある地域の企業で働くことで、ワーカーにその地域の魅力を伝えるという効果が出てきます。
働くことで得られるのは、お金だけではありません。「働く」とは、「縁ができる」ということです。仕事でもなければその地域に行くこともなかった人が、仕事を通じてその地域に親しむ。それによって出会いが生まれ、その地域にまた行ってみよう、住んでみようと思う人が増えることが期待できます。
それ以外にも、例えば石川県では復興支援の関係でスポットワークを募集しましたし、兵庫県三田市では、ひとり親の就労支援のお手伝いもしました。
— ひとり親の就労には、どのような課題があるのですか。
石橋 ひとり親として働く方は、子育てを優先した時間の使い方になるために、自身のキャリアに自信が持てない場合や、職場環境を変えたくても踏み出せない場合も少なくありません。しかしタイミーを使えば自分の好きな時間に好きな場所で働くことが可能になります。働きに出た先で評価が高ければ、そのままそこに就職することもあり得ます。スポットワークを通じて、新たな就職先を見つけることができるんです。
タイミーではひとり親に限らず、短時間労働を経験することで、引きこもり状態で社会参加できていない人に働く自信をつけてもらうなど、積極的に就労支援をしています。人は働くことを通して、自分の社会貢献を実感することができます。
自分の暇な時間が誰かに必要とされるという経験は、非常に心強いことなのです。
ほかにも公務員にタイミーで副業を紹介するといった取り組みの実績も一部ありますし、税の申告漏れを防ぐお手伝いもしています。タイミーで働いたことで、初めて確定申告をしなければならなくなったという人は多いんです。「いくら以上の収入で確定申告が必要か」「どうやってやるのか」といった内容を、外部と連携しながらレクチャーしています。
スポットワークの社会的価値とは
— 2017年の創業から8年で、スポットワークの利用は爆発的に広がっていますね。
石橋 タイミーを導入している企業は2024年12月時点で15万9千社、登録しているワーカーは1000万人に達し、今も増え続けています。業種としては物流(軽作業)が一番多く、飲食と小売が続いています。それ以外にも介護や保育、農業、製造業など、多くの産業に導入先が広がっていますし、専門職である税理士などもマッチングしています。
— スポットワーク需要の高まりには、どんな社会的背景があるとお考えですか。
石橋 1つは労働需給の変化です。日本では長らく“人あまり”の時代が続いていましたが、2014年くらいから逆転し、「企業が人を選ぶ時代」から「人が企業を選ぶ時代」へと変わってきています。タイミーが働き手だけでなく企業にも受け入れられたのは、そうした時代背景もあったと思います。
もう1つは働き方改革の影響です。かつて「アルバイトは学生やフリーターのもの」というイメージがありましたが、今では企業の就業規則も変わり、正社員も含めて多くの人が副業を考えるようになっています。
2019年4月から働き方改革関連法が施行され、労働条件通知書の電子化が認められました。それまでは契約の際、必ず紙の書類が必要だったものが、初めて電子で契約を完了できるようになったんです。タイミーではその2カ月後にアプリ上で雇用契約を完結させられる機能を実装しています。
— スポットワークで働いているのはどんな人たちですか。
石橋 ワーカーについてはほぼ男女半々で、年齢については40代までが9割と、若い人の利用が中心です。一方で昨今、シニア層の登録も増えていて、60歳以上も4.6%。比率としては少ないですが、全体が1000万人ですから、46万人もの方が登録している計算です。これまでに働いた中で最高齢は86歳の方でした。タイミーは18歳から利用することができますが、登録しているワーカーには90代もおられ、若者から高齢者までご利用いただいています。
— 副業としてスポットワークをしている方の、本来の職業は何が多いのでしょうか。
石橋 初期には学生が中心でしたが、コロナ禍以降は会社員の副業が増え、現在は全体のおよそ半数が会社員となっています。他はパート・アルバイト、主婦などです。
「正規の仕事がないから、やむを得ずスポットワークで働いている」という人を、「不本意非正規雇用労働者」と呼んでいますが、総務省の調査で全体の9.3%、タイミーのスポットワーカーへのアンケートでは4.2%と、割合としては低くなっています。
ただスポットワークのみで生計を立てているという人も0.6%います。スポットワーク研究所としては、そういった人たちにどう貢献していくかを考えています。
— 何かいい方法がありますか。
石橋 今、構想しているのは、「スポットワークで働くことでキャリアを積み上げていける仕組み」です。バッジ機能のお話をしましたが、スポットワークは単に時間を使ってお金を得るだけでなく、さまざまな職場で働くことでスキルアップも見込めるし、評価も受けられます。タイミーでワーカーが受けた評価を履歴書に反映させ、本人のキャリアアップにつながる仕組みができないかと考えています。「履歴書2.0」と呼んで
います。
がんばったことがその人のキャリアになるべきで、公的に認められた資格でなくても、例えば「ビールを注ぐのが日本一うまい人は、時給1万円を取ってもいいのではないか」と個人的には思っています。
— 石橋さんは以前にnote(ネット上のコンテンツ発信プラットフォーム)で「採用強化策の非常識」「低く固定化された人件費率の非常識」といった「人事の非常識を変えたい」という思いを書かれていましたが、そう感じるようになったきっかけは何でしょうか。
石橋 居酒屋で人事をやっていたとき、初めてのアルバイトと3年目のアルバイトで貢献度がまるで違うことを実感しました。でも、新人でも3年目でも、時給の違いはごくわずか。高いパフォーマンスを出してくれている現場メンバーにベネフィットが還元されていないのはおかしい、何とかならないかと感じていました。
アルバイトの採用では、映える写真を撮影するためにお金を払ったり、募集が検索で上位に表示されるよう課金したりといったことをしていたのですが、採用広告に費用を投じるのは本質的ではありません。職場の魅力を直接伝え、それによって働き手に選ばれて、がんばった成果は本人に還元されるようになってほしいと考えたのです。
— スポットワークの社会的価値には、ほかにどういったものがあるでしょうか。
石橋 マクロの視点で見れば、潜在労働力を顕在化させるスポットワークの機能は今後、人口が減っても日本が経済成長を続ける上でのキーになると考えています。
同様に、労働移動のお手伝いもスポットワークの重要な役割です。新型コロナでは飲食業から物流業へ大きな労働移動がありました。その際も、タイミーは一定のお手伝いができたと考えています。
— 企業にとってスポットワーク導入は、臨時の労働力を確保する以外にどんな効果がありますか。
石橋 研究所の調査では、スポットで働いてもらうことでその企業の実情が外部に知られるようになり、それが職場の環境改善や、残業を減らすことにつながっているという結果が出ています。企業の内情がガラス張りになることで、社会的不正も減るし、採用にもつながっていくでしょう。
中小企業には「そもそもアルバイトすら雇ったことがない」というところも少なくありません。そんな企業がいきなり正社員を採用しようとしてもなかなか難しい。それは、今いる社員以外に、誰もその企業の内情を知らないからで、内情不明の会社には皆行きたがりません。スポットワーカーに働いてもらい、企業の評価を残してもらえれば、世間に企業を知ってもらうきっかけにもなります。
また、企業にとってスポットワーカーが来ることは、社員が未経験者を教える訓練にもなっています。地方の中小企業などでは、何年も新人が入ってこないことが多く、人に教える機会が少ないですから。
— 今後、タイミーとして社会に対しどのような働きかけをしていく予定でしょうか。
石橋 ありとあらゆる仕事をスポットワークにできるよう、業務の切り出しを続けていきたいと考えています。
民間の事業だけでなく、公務員の仕事や学校の先生なども、一部をスポットにするようにできないか検討中です。実は法律上はすでに可能で、そのための制度もあるんです。実現に向けて、省庁との相談を進めています。
各種の資格についても、取得する機会をワーカーに提供していきたいと思っていますし、今、資格を持っている人がそれをより活かせるように、資格なしでもできる業務と、資格がないとできない業務を切り分けていきたいと考えています。
介護の仕事などでは資格なしでもできる作業が見いだせると思っています。それを切り出していけば人手不足の解消にもつながりますし、資格者の生産性も上がり、未経験の人が「自分も資格を取ろう」と思うきっかけにもなります。
— 石橋さん個人としてはスポットワークを通じて、どのような社会をつくっていこうと考えられていますか。
石橋 まず創りたかったのは、お試しで働くことができ、結果としてミスマッチのない就職先の選択ができる社会です。スポットワークを入り口として、どの業界、どの会社でも働けるような社会を創っていきたいと考えています。
もうひとつは「がんばりが報われる社会」です。学歴や資格などの条件にとらわれず、最初の数時間がんばればそれが評価され、その人のキャリアの第一歩となる。そしてそれを積み重ねていくことで、最終的に何者かになれる。そういう社会を実現させたいと願っています。